2022.03.11
保育の5領域とは?具体例や基礎知識について解説
まずは5領域について基礎知識を学んでいきましょう。
また、5領域に関連する「3つの柱」と「10の姿」の内容も解説していきますので、保育士さんは日々の保育や指導案を作成するときに役立ててください。
保育の5領域とは
5領域を学ぶには、まず保育所保育指針を理解する必要があります。
保育所保育指針とは、全国どこの保育園にいても同じように子どもの健康や安全が保てるよう保育の基本を示したもので、現場に出てからも指導計画作成の際の参考になるものです。
保育所保育指針は2018年に改定された際に、幼稚園や認定こども園と整合性を図るため、新たに2つの項目が追加されました。
それが「小学校入学までの間に育ってほしい姿」と「育みたい能力や資質」であり、これらは「保育の5領域」が元になっています。
では肝心の5領域とは一体どのようなものなのでしょうか。
5領域とは保育のねらいや目標を5つの側面から捉えたもので、以下の5つに分けられています。
● 健康
● 人間関係
● 環境
● 言葉
● 表現
保育所保育指針には5つそれぞれに、ねらいと内容が細かく記載されています。保育士はこれらの5領域を常に意識しながら指導計画を作成したり普段の保育を行い、子ども達の心身の発達を促していきます。
保育の5領域のねらい
保育の5領域には「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」があることが分かりました。
保育のねらいとは、保育園での生活を通して育んでもらいたい能力を子どもの姿から捉えて具体化したものです。
保育所保育指針では、1歳以上3歳未満児と3歳児以上で、5領域のねらいが若干異なりますが、今回は3歳児以上のねらいについて解説します。
健康:健康な心と体を育て自分で健康な生活を作る基礎を養う
【ねらい】
● 明るく伸び伸びと行動し、充実感を味わう。
● 自分の体を十分に動かし、進んで運動しようとする。
● 健康、安全な生活に必要な習慣や態度を身に付け、見通しをもって行動する。
さまざまな活動や遊びを経験する中で体を動かして健康的な体を作ったり、清潔を保つことに関心を持つことは健康の領域です。
保育士は子どもが安心安全に生活できる場を作り、自分で見通しを持った行動ができるよう援助することが大切です。
また、手洗いや歯磨きなど病気にならないための活動を子どもが進んで行うための工夫をすることも、保育士には求められるでしょう。
人間関係:生活の中で自立心を育て人と関わる力を養う
【ねらい】
● 園での生活を楽しみ、自分の力で行動することの充実感を味わう。
● 身近な人と親しみ、関わりを深め、工夫したり協力したりして一緒に活動する楽しさを味わい、愛情や信頼感をもつ。
● 社会生活における望ましい習慣や態度を身に付ける。
人間関係の領域では保育士や友達との関わりを楽しみながら、自分で考えたり行動する力を育て、思いやりや協調性を養っていくことが内容として挙げられます。
幼児期のうちに生活の中には決まりがあることを知ったり、楽しく遊ぶためにはルールを守らなければならないことを学びます。
子どもの自立心が育つよう、子ども同士で関わることができる活動をたくさん取り入れていきましょう。
環境:周囲の環境に興味を持ち生活に取り入れる力を養う
【ねらい】
● 身近な環境に親しみ自然と触れ合う中で、さまざまな事象に興味や関心をもつ。
● 身近な環境に自分から関わり、発見を楽しんだり考えたりし、それを生活に取り入れようとする。
● 身近な事象を見たり考えたり扱ったりする中で、物の性質や数量、文字などに対する感覚を豊かにする。
園庭や公園の植物、園で育てている動物や生き物などに触れることで、身近な環境に興味を持ち、自然の不思議さや季節の変化に気付くことができます。
環境の領域で扱っている内容は子どもの身の回りの物全てのことを指しています。
生活の中で時間や数字に興味を示すことも環境なので、保育士は子ども達の好奇心を刺激するような関わりを持つよう心掛けましょう。
言葉:相手の話を聞く意欲を育てたり自分の言葉で表現する力を養う
【ねらい】
● 自分の気持ちを言葉で表現する楽しさを味わう。
● 人の言葉や話をよく聞き、自分の経験したことや考えたことを話し、伝え合う喜びを味わう。
● 日常生活に必要な言葉が分かるようになるとともに、絵本や物語などに親しみ、言葉に対する感覚を豊かにし、保育士等や友達と心を通わせる。
子どもは楽しかったことや感動したことなどがあると、保育士や友達に話したいし聞いてもらいたいという思いが強くなります。
ですが、まだ上手に自分の気持ちを言葉で伝えられない子どももいますので、保育士は問いかけをしたり気持ちを代弁するなどして、フォローしてあげてください。
保育士の話を聞く、絵本のお話を聞くなど、話を聞く体験を積むことで子どもは自分の話だけでなく友達の話も聞けるようになっていきます。
表現:自分のイメージを表現するために創造性や感性を養う
【ねらい】
● いろいろなものの美しさなどに対する豊かな感性をもつ。
● 感じたことや考えたことを自分なりに表現して楽しむ。
● 生活の中でイメージを豊かにし、さまざまな表現を楽しむ。
遊びの中には表現の領域に当てはまるものが多く存在します。
例えば、絵画などの製作活動、ダンスや楽器演奏、発表会で演劇を行ったり歌をうたうことも表現活動のひとつです。
表現を楽しむことで、想像力や発想力が鍛えられ感性も育まれていきます。
保育士は表現することが楽しいと思えるような保育活動を取り入れていけると良いでしょう。
[引用]※【ねらい】の箇条書き
保育の5領域を活用する方法とは?具体例を紹介
5領域をそれぞれ単体で考えて子どもの活動に当てはめていくこともできますが、ここでは5つの領域全てを組み合わせた具体例を3つ紹介します。
5領域の活用方法|製作活動:ちょうちょ作り
日頃から保育の活動として製作をすることはたくさんあると思いますが、製作活動は身近な素材を使うことが多いため、子ども達の想像力や表現力を育みます。
今回は製作活動の中でも春の訪れが感じられる「ちょうちょ」を画用紙で作り、4歳クラスの保育室の壁に貼ることを想定して、5領域の内容に当てはめてみました。
● 健康:はさみ・ノリ・絵の具などさまざまな道具を使って手指を動かす。
● 人間関係:保育士に作り方を教えてもらったり、友達と一緒に製作活動をする楽しさを味わう。
● 環境:身近な道具や材料に親しんだり、絵の具の色の変化に興味を持つ。
● 言葉:壁に飾った友達の製作物を見て感想を言葉で伝える。
● 表現:完成したちょうちょからイメージを膨らませて、本物のちょうちょをつかまえに行く。
製作遊びは幅広い年齢の子ども達が楽しめますので、5領域を意識しながら保育に取り入れてみてください。
5領域の活用方法|外遊び:砂遊び
子ども達が大好きな砂遊びは、0歳から5歳まで全ての子どもが楽しめる外遊びです。
砂は乾いているとサラサラしていますが、加える水の量によってさまざまな形状に変化するため、感触遊びにも適しているでしょう。
感触遊びについて詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです。
年齢によっては砂場でおままごとをしたり、山やトンネルも作れますので、遊び方のバリエーションもさまざまです。
3歳児クラスを想定し、5領域に落とし込んで考えてみましょう。
● 健康:空き容器やシャベルなどの道具を使う、手で穴を掘る、立ったりしゃがんだりするなど全身を使う。
● 人間関係:砂や泥で作ったものを食べ物に見立てて保育士や友達と関わって遊ぶ。
● 環境:砂と水を混ぜて変化する様子を楽しむ。
● 言葉:「はいどうぞ」「ありがとう」などやり取りをしたり、砂の感触を言葉で伝える。
● 表現:友達とイメージを共有しながら砂のプリンや泥団子を作る。
自分たちで作ったものを食べ物に見立てた「見立て遊び」は、「ごっこ遊び」へと発展していく可能性があります。
保育士は子どものイメージが膨らむような声かけをして、友達同士で関われるよう誘導していきましょう。
5領域の活用方法|室内遊び:ハンカチ落としゲーム
室内遊びの定番として人気のハンカチ落としは4~5歳クラスで行われることの多いゲームです。
いつ自分の手の上にハンカチが落とされるかドキドキ待つことで集中力が高まり、落とされたらすぐに鬼を追いかける遊びなので、反射神経や瞬発力も鍛えられます。
5歳クラスの子どもを想定して、5領域との関わりを見ていきましょう。
● 健康:全力で逃げたり追いかけたりと、体を動かすことを楽しむ
● 人間関係:ゲームのルールを守りながら集団で遊ぶ楽しさを知る
● 環境:右回り・左回りなどの向き、鬼が回れるのは3週までなど、遊びを通して向きの概念や数を学ぶ
● 言葉:反対周りに走ってる友達に「逆だよ~!」と教えたり、「逃げろ~!」とみんなで声を掛け合う
● 表現:ゲームが終わった後、楽しかった気持ちを友達同士で共有する
ハンカチ落としはルールをアレンジすることもできるので、慣れてきたらさまざまなルールを追加してみましょう。
ゲームを行う際は十分なスペースを確保して安全に注意しながら行ってください。
保育の5領域に関連する「3つの柱」「10の姿」の内容
5領域の解説で少し触れた「小学校入学までの間に育ってほしい姿」と「育みたい能力や資質」は、「10の姿」と「3つの柱」のことを指しています。
前述の通りこれらは5領域に沿った内容で、子どもに育ってほしい姿や能力が示されたものです。
それぞれの内容を確認してみましょう。
10の姿は保育活動を通して育ってほしい子どもの具体的な姿
5領域が元になっている10の姿は、卒園までの間に育ってほしい子どもの姿で、全部で10つの項目に分かれています。
1. 健康な心と身体
2. 自立心
3. 協同性
4. 道徳性・規範意識の芽生え
5. 社会生活との関わり
6. 思考力の芽生え
7. 自然との関わり・生命尊重
8. 数量・図形、文字等への関心・感覚
9. 言葉による伝え合い
10. 豊かな感性と表現
10の姿は理想的な子どもの姿とも言えます。
2018年に新しく追加されたことによって保育の方向性が明確になり、目指したい子どもの姿が分かりやすくなったのではないでしょうか。
子どもの発達は個人差が大きいので、卒園までに必ず達成しなければならないものではありません。
10の姿についてより詳しく知りたい方はこちらもチェックしてみてください。
3つの柱は生きる力を身につけるために育みたい資質・能力
子ども達に遊びや園生活を通して生きる力の基礎を身につけてもらうために、保育所保育指針では以下の3つの柱を掲げています。
1. 知識及び技能の基礎
2. 思考力、判断力、表現力等の基礎
3. 学びに向かう力、人間性等
保育全般でも言えることですが、これらは目標であるため教え込むのとは訳が違います。
保育士は遊びを通して自然な形で指導していくことが求められるでしょう。
3つの柱は保育所保育指針だけでなく、学習指導要領でも同じように示されているため10の姿と同様、小学校との連携のときに大切な要素となります。
保育の5領域を理解して子どもの発達を促そう
今回は保育の5領域のねらいについてと、5領域を子どもの遊びに当てはめた実例をご紹介しました。
保育では5領域を基本とした指導計画を作成することで、自然と10の姿や3つの柱に近付くことが期待できるでしょう。
「5領域」「10の姿」「3つの柱」はどれも子どもの成長に必要不可欠な指針なので、保育士はそれぞれをしっかり理解して子どもの健やかな成長を支えていきましょう。
記事公開日:2022.03.11
記事更新日:2022.03.11