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2021.12.28

「10の姿」とは?保育の5領域との違いや保育士が意識すべきポイント

「10の姿」とは?保育の5領域との違いや保育士が意識すべきポイント

保育士は日々の保育を設定したねらいに沿って行っているかと思いますが、10の姿を具体的に知ることで、子どもに育ってほしい能力や方向性を明確にすることができます。

保育活動に10の姿を取り入れていく際に意識すべきポイントについても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

小学生入学までに育んでほしい「10の姿」とは

「10の姿」は、文部科学省が示している小学校に入学するまでに育んでほしい指針です。

2018年4月に「幼稚園教育要領」「保育所保育指針」「幼保連携型認定こども園教育・保育容量」が改定された際に新しく作られました。

保育には「5領域」という幼児教育の基礎となる重要なものがありますが、これを元に子どもたちが小学校入学前までに育んでほしい姿を具体的に示したものが10の姿です。

10の姿の目的を保育所保育指針解説資料を元に、それぞれ項目ごとに見ていきましょう。

1. 健康な心と体

【目的】

● 園での生活や保育活動を通して、子ども自身が好きな遊びを心と体を十分に使って取り組み、充実感を感じる。

● 遊びや生活に見通しを持って行動し、健康的で安全な生活を自ら作り出す。

時間を意識しながら見通しを持って行動できるようになることで、小学校入学後の時間割生活の流れに対応しやすくなります。

保育園生活で自ら体をたくさん動かして遊んだ経験は、今後の運動遊びの場面で活きていくでしょう。

2. 自立心

【目的】

● 活動に主体的に取り組みながら、自分がやるべきことを自覚して工夫して行動する。

● 粘り強く最後までやり遂げる経験を通して達成感を味わい、自信を持つ。

子どもは活動に主体的に関わるなかで、保育士に見守られている安心感の元、最後まで自分の力でやり遂げる体験を積んでいきます。

小学校以降の生活でさまざまな課題に直面した際、自分で考えて意欲的に取り組んでいく力は、幼児期の主体的な活動が土台となっているのです。

3. 協同性

【目的】

● 友達と遊びのイメージを共有したり意見を言い合いながら、共通の目的を持って活動をやり遂げる。

子どもは友達との関わりを通してさまざまな体験をし、人間関係を培っていきます。

年長児になるとお互いに思いを共有する姿が見られるようになるので、保育士は子どもの目的が達成できるよう環境を整えたり援助していくことが大切です。

4. 道徳性・規範意識の芽生え

【目的】

● 園生活で友達と関わるなか、やって良いことと悪いことの判別ができるようになり、相手の立場に立って行動する。

● ルールを守る大切さを知り、気持ちに折り合いを付ける。

友達が考えていることを想像して自分の行動を振り返るなど、相手の気持ちや決まりの大切さに気付くようになっていきます。

保育士は子ども同士で解決しようとしている姿を認めながら、状況に応じて子どもの気持ちを代弁してあげると良いでしょう。

5.社会生活との関わり

【目的】

● 保育園での活動、地域の人たちなどさまざまな環境にふれあうことで、地域に親しみを持ち、人の役に立つ喜びを感じる。

● 生活に必要な情報を得て、それを活用したり役立てながら社会とのつながりを意識する。

子どもは園生活のなかで、多くの人達と関わりを持ちます。

例えば地域清掃などの取り組みは、地域の人達とのコミュニケーションのきっかけにもなり、「ありがとう」と言ってもらえることで、地域の役に立っていることを実感できるようになります。

6. 思考力の芽生え

【目的】

● さまざまな事象に興味を持ち、物の性質や仕組みに気付いて予測したり、工夫しながら関わる。

● 自分と違う考えがあることに気付き、新しい考え方を取り入れたり、自分の考えを良いものへと変えていく。

子どもは大人にはない発想で遊びを発展させるので、物の特性を活かしながら子どもの好奇心を刺激するような環境を作り、子どものひらめきを引き出していく必要があります。

7. 自然との関わり・生命尊重

【目的】

● 自然の美しさや変化に触れる体験を通して子どもなりに感じたことを表現する。

● 動物や植物にふれあうなかで、生命の不思議さやいのちの尊さに気付き、大切にしようとする気持ちを持つ。

季節の変化や自然の不思議さが感じられるような体験は、子供の成長にとって欠かせないものです。

保育室で生き物を飼育したり、園庭で野菜を栽培するなど、自然や生き物とたくさん関われる活動を行っていきましょう。

8. 数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚

【目的】

保育活動を通して、数や文字などに親しみを持ち、それらの役割に気付いたり活用しようとしたりする。

例えば、製作物を作るときは自分がイメージするものに合わせて、必要な大きさや形のものを選んだりします。

友達の名前の文字や、時計の数字に興味を持ち始めたら、より関心が持てるよう環境を整えてあげましょう。

9. 言葉による伝え合い

【目的】

保育士や友達との関わりのなかで言葉での表現を身に付け、自分の考えや経験したことを言葉で表現しながら伝え合うことを楽しむ。

子どもは言葉でのやり取りをたくさん行う経験を通して、相手の話に共感したり、思いが伝わる喜びを感じ、言葉での表現力を豊かにしていきます。

保育士は読み聞かせなどを積極的に行い、さまざまな絵本やお話に親しむ機会を作ってあげることも必要です。

10. 豊かな感性と表現

【目的】

● 園生活のなかのあらゆる場面で心を動かす出来事に触れて、感性を豊かにする。

● 気付いたことや感じたことを友達と一緒に表現することを楽しむ。

遊びや保育活動を行うなかで、子どもはいろいろなことに感動し、それを表現しようとします。

表現したいという意欲をより高めてあげるためにも、素材や道具を豊富にそろえて子どものイメージを表現できる環境を作ってあげましょう。

「保育の5領域」との違い

10の姿2

10の姿について具体的に説明しましたが、元となっている5領域とはどのような違いがあるのでしょうか。

10の姿が卒園までに育ってほしい子どもの姿の方向性を示していたのに対し、5領域は保育に関するねらいを5つに分類したものです。

保育所保育指針においては「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」が5領域として示され、それぞれでねらいと内容が定められています。

10の姿は「こう育ってくれたらいいな」という「理想」であり、一方で5領域は10の姿により近付くための「目標」であると言えるでしょう。

保育士が指導計画を作る際に参考にすべきものは、5領域のねらいであり、このねらいを目標にすることで自然と10の姿が見えてくるのではないでしょうか。

保育士が「10の姿」で意識すべきポイント

10の姿は、必ずしも卒園までに到達していなければならないものではありません。

発達には個人差があるため、育ってほしい姿が見られないからといって焦る必要はないのです。

幼児期までに育ってほしい姿は目安とし、個々の子どもの成長を大切にしながら得意分野を伸ばしてあげられる保育を行いましょう。

また、子どもの成長や学びは保育園から小学校へと連続していることを忘れず、保育士は10の姿を小学校の先生と共有して、子どもの生活がスムーズに移行できるよう配慮を行うことも必要です。

保育における子どもの10の姿は発達の目安として捉えよう

10の姿3

小学校入学前までに育ってほしい子どもの10の姿を具体的に紹介しました。

5領域との違いを理解し、子どもの発達差に留意しながら保育を行っていくことが大切です。

10の姿を保育の最終目標とせず、子ども一人ひとりに向き合ってさまざまな体験ができるよう保育環境を整えていきましょう。

記事公開日:2021.12.28

記事更新日:2021.12.28