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2019.10.28

【インクルーシブ保育】って知っていますか? インクルーシブ保育の実際について解説します!

橋本 学校法人三幸学園
 大宮こども専門学校専任講師
 小田原短期大学非常勤講師

 橋本 圭介

みなさんは「インクルーシブ保育」という言葉を知っていますか?
現在、保育を学んでいる学生のみなさんは、一度は聞いたことがあるでしょう。
今回のテーマはこの「インクルーシブ保育」です。その内容を理解すれば言葉の理解も進みます。

 

1. インクルーシブ保育が生まれた背景

もともと、インクルーシブとは、「包括する」という意味で、国籍や年齢、障がいなどを問わずいろいろな子どもたちを包括的に保育しようとする考え方です。

従来、障がいのある子どもは学ぶ環境が限られていました。
しかし、2006年に国連でインクルーシブ教育という考え方が提唱されてから、すべての子どもたち一人ひとりに「違い」があることを前提に教育環境を提供しようという動きが広がりました。

では、このような考え方に根底にあるものは何でしょうか。それは、「ノーマライゼーション」という考え方です。
それを受けて、日本は「共生社会」という概念を作り出しました。 

厚生労働省は、「共生社会」を次のように言っています。

これまで必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった障害者等が、積極的に参加・貢献していくことができる社会である。それは、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える全員参加型の社会である。このような社会を目指すことは、我が国において最も積極的に取り組むべき重要な課題である。

と。

さて、ノーマライゼーションに話を戻します。数式で言うならば、インテグレーション+メインストリーミング=ノーマライゼーションです。
インテグレーションとは、「統合化」と訳します。世界ではだいたい1950年代から少しずつ広がっていった考え方で、1980年代にアメリカで採用されてきました。
一方、日本では、その時期は、まだ「分離保育」が中心でした。
見てきた通り、日本ではまだ新しい概念であり、現実を見るとまだまだ発展途上にあります。

 

2. インクルーシブ保育の定義

インクルーシブの基本的な考え方がわかった上で、インクルーシブ保育の定義をしてみましょう。
定義することで、インクルーシブ保育の大枠の考え方が言葉で説明できるからです。ここで、2つの保育について説明しておきます。

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このように、障がいの有無で保育の対象を二分していました。
インクルーシブ保育をここに当てはめてみると、この障がいの有無での二元論では成立しません。
ではどういう考え方といえば、人間の差異(違い)を障がいで分けないことです。

ここで、読者のみなさんに考えてみてほしいことがあります。それは、「障がい児」に対する言葉です。
現状、「健常児」という言葉を使っていますが、障がいがないことが、「健康が常である」と同じ意味でしょうか。
何か、「健常児」に代わる適切な言葉あればぜひ、教えてください。

3. インクルーシブ保育の意義

平成30年6月6日の朝日新聞の記事には次のようにあります。

埼玉県にある社会福祉法人では、AD/HD、自閉症、LDなどと診断された未就学児への発達障がい療育を保育園併設で行っています。これは「普通の社会で育ち、発達障がいを克服してほしい」という願いから始まりました。併設することで、顔見知りの普通級の園児たちと過ごす時間が増え、保育園へ転園することも可能にしています。この方法は環境の変化に適応することが苦手な発達障がいのある園児やその保護者にとって有効です。

上記の記事でわかるように、障がいのある園児とない園児を完全に分けることではなく、完全に一緒にすることでもありません。
ある保育園では基本的には分離保育をしていますが、同じ屋根の下で生活していますので、子どもたちが自由に行き来ができ、知らない間に交流しているという園児たちの「人を受け入れる柔軟性」に驚きます。

将来、障がい者と障がいのない者が当たり前のように生活するには、「自分と違う人を認めるという」これからの人間関係の構築に必ず役に立つものです。

 

4. インクルーシブ保育の歴史

1でも少し述べましたが、インクルーシブ保育の歴史を探ってみましょう。
インクルーシブ保育の源流には、誰もが普通に(ノーマルに)その地域社会で暮らせる社会づくりである「ノーマライゼーション」があります。その考え方の下、次のような歴史をたどっています。

1994年   「特別なニーズ教育に関する世界会議」@サマランカ(スペイン)「万人のための教育」を前進させる必要性を国際社会に呼びかける“サマランカ声明”を採択。
2006年 「障害者の権利に関する条約」第61回国連総会で採択。
2007年   日本が「障害者の権利に関する条約」に署名。
2014年  1月に批准。世界で140番目の締結国となる。

国連の採択から8年かかってやっと批准したという経緯でわかるように、障害者の権
利というものへの意識が諸外国に比べると低いことがわかります。

日本国内では、

2006年 「教育基本法」改正:第4条の2で「2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。」と規定。
2007年 「特殊教育」から「特別支援教育」への転換。
2012年 「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」報告で、「共生社会」の重要性を述べる。
2013年 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」を制定。

このように、法整備もなされ、実際に運用が始まっています。

 

5.専門機関及び小学校との連携

特別な支援を必要とする子どもへの対応は、家庭内や保育園内だけでは到底賄い切れるものではありません。
在園中は専門機関との連携、将来的には就学する小学校との連携が必要です。日本は縦割り行政だと揶揄されますが、ここに来て「横の連携」が始まっています。

ただし、専門職とつなぐ場合は注意が必要です。それは、保護者にとって自分の子どもが専門的なケアが必要なくらいに重症であると思ってしまいがちだからです。まずは、主任や園長と相談して段階を踏んで専門職につなげる支援が求められます。第一段階として、専門職に来園してもらえると保護者の抵抗も軽減されます。

小学校との連携については、保育所保育指針で「子どもに関する情報共有に関して、保育所に入所している子どもの就学に際し、市町村の支援の下に、子どもの育ちを支えるための資料が保育所から小学校へ送付されるようにすること。」と規定されています。この書類が『保育児童保育要録』です。就学すると、こくご・さんすうという科目教育が始まります。日本の学校教育は積み上げ式です。1年生の内容が理解できた上で、2年生の学習があります。小学校もこの要録を頼りにしています。保育士は、園児の将来を意識して要録を書いてほしいと思います。

 

6.インクルーシブ保育のおける支援

私が懇意にしてもらっている社会福祉法人どろんこ会では、インクルーシブ保育を実践していますのでご紹介します。
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https://www.doronko.jp/nurture-policy/nurture/

 

私は、東京都足立区日ノ出町にある「発達支援つむぎ 北千住ルーム」を見学しました。


そこで指導員の方に、徐々に慣らしていけば、子ども同士は障がいの有無に関してはあまり意識いないと聞きました。
ただ、支援が必要な園児は自分の気持ちをコントロールすることが苦手なので、ケガや事故には気を付けているとも言っていました。

 

7.インクルーシブ保育の課題

すべての子どもを取り込んで保育する理想的ともいえるインクルーシブ保育にも課題があります。
障がいのある園児とない園児を一緒に保育する保育は、個性と強調性ははぐくむには適切なシステムですが、一方では、さまざまな危険性があるのもまた事実です。

課題1.保育士に求められるインクルーシブ保育に関する幅広い能力の必要性

求められるスキル
1) 子ども同士の衝突時への対応
2) 障がい児についての専門知識
3) 外国語の知識と運用
4) 一人ひとり違う人間であることへの理解

 

課題2.園児と保育士双方の起こりえるデメリット

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インクルーシブ保育の効果はたくさんあります。
例えば、少数派の園児たちは他の園児たちと接することで、他の園児たちはいろいろなことをその少数派の園児から学びます。
しかし、例えば、発達障がいのある園児の学びとはなんでしょうか。
周囲の園児の学びに加えて、当事者の学びが何かを考え保障していくという姿勢が求められています。

<橋本圭介さんによる過去の記事>
発達保育の基本スキル-保育士はどうやって現場で発達支援をしているか-
https://ohana.hoiku-hiroba.com/post/646

本当に給料上がってる?保育士の待遇改善についてきちんと知っておきましょう!
https://ohana.hoiku-hiroba.com/post/627

保育士のキャリアアップ研修を活用して給料アップを狙いましょう!
https://ohana.hoiku-hiroba.com/post/611

ついに始まる「保育・幼児教育無償化」働く保育士や幼稚園教諭に与える影響とは?
https://ohana.hoiku-hiroba.com/post/608

株式会社と社会福祉法人の違いを正しく理解して自分に合う保育園を選びましょう
https://ohana.hoiku-hiroba.com/post/706

 

<参考サイト等>
●名須川知子・大方美香,2017『インクルーシブ保育論』ミネルヴァ書房
●橋本圭介,2017『発達保育の基本スキル』秀和システム
●異年齢保育・インクルーシブ保育の実践
https://www.doronko.jp/nurture-policy/nurture/
●インクルーシブ保育とは?インクルーシブ教育の課題と危険性!
https://40exchange.com/inclusiveeducation-2819 
●ICTキッズ
https://ict-kids.com/inclusicve/

記事公開日:2019.10.28

記事更新日:2019.10.21