2019.08.05
本当に給料上がってる?保育士の処遇改善についてきちんと知っておきましょう!
待機児童問題の対策として昨今「保育士の処遇改善」が徐々になされています。
しかし、実際処遇が改善されたという実感がない・・・というかたも少なくはないはず。
今回は「保育士の基本スキル」などの本を執筆されている橋本圭介さんが、保育士の処遇改善に関して、現時点でなされていること、そして今後なされることをわかりやすく解説します!
まず、保育士の給料は安いと世間では言われますが、本当にそうなのでしょうか。
保育士への処遇改善という言葉もあります。実際にはどうなのかを検証してみましょう。
保育士の給料は本当に低いのか?
「厚生労働省 賃金構造基本統計調査 2013年~2017年」によると、保育士の平均年収は約309.8万円(2013年)→約342.1万円(2017年)と、5年間の間に32.3万円も上がっていることがわかります。
ここで、よく引き合いに出される幼稚園教諭と比較してみましょう。
実際には、幼稚園と保育所では標準保育時間や夏季休業などの違いがありますので単純に額面だけでの比較はできませんが、2017年でみると若干ですが、保育士の給料のほうが幼稚園教諭を上回っています。
処遇改善の実態
昨今保育士の処遇改善の動きがありますが、具体的にどのような変更があるのかをまとめます。
1.子ども・子育て支援新制度
2015年4月から「子ども・子育て支援新制度」がスタートしたことはご存知でしょうか?
認定こども園のより一層の普及や、給付金制度の刷新などが目玉の新制度だったのですが、この新制度下で保育士の給料が平均3%上昇しました。加えて、2014年度の公務員給与の見直しに準拠し、2017年4月から保育士の給与が平均2%改善されています。
この制度により、2015年から~2017年の間に保育士全体のお給料は5%アップしました。
2.キャリアアップができる仕組み
平成29年の4月に厚生労働省から、保育士の待遇向上と専門性の強化に向けての「保育士等キャリアアップ研修」とそのガイドラインが定められました。
研修を受講しです。
さまざまな知識・スキルアップすることに加えて「副主任保育士」「専門リーダー」という役職を設けることで手当てを創設する仕組み条件がありますので一律にキャリアップできるわけではありませんが、実際にある制度ですから利用しない手はありません。
とは言え、次のような条件のもとに実施されてます。
・支給経路は国から園へ。
・研修修了者への4万円の支給は100%ではない。
・国から支給された手当を園は各園の方針で配分を決定できる。
そのため研修を受ければ必ず給料が上がるということではありません。保育士自身の保育のスキルアップのためを第一に考えて受講することが良いでしょう。
3.施設型給付費等に係る処遇改善等加算
この加算の目的は「教育・保育の提供に携わる人材の確保及び資質の向上を図り、質の高い教育・ 保育を安定的に供給していくために、「長く働くことができる」職場を構築する必要がある。」としています。
また、対象の施設・事業所は「全ての都道府県及び市町村以外の施設・事業者が運営する特定教育・保育施設 (都道府県及び市町村以外の者が設置するものに限る。)及び特定地域型保育事業所」としています。
4.今後予定されている保育士の給料の処遇改善施策
2018年保育士の確保や他産業との賃金格差を踏まえた処遇改善に更に取り組むこととし、2019年4月から更に1% (月3,000円相当)の賃金引上げを行いました。
ちなみに、同年10月に実施予定の幼保無償化に伴って大きなベースアップは特に予定されていません。
それぞれの自治体の補助体制や保育園自身の努力が見込まれます。
処遇改善で保育士は増加するの?
待遇改善だけでは現場保育士は増えません。全国で保育士資格を持つ人は約120万人もしかし、実際に保育所に勤務する人は40万人。つまり120万-40万=80万人が潜在保育士です。
潜在保育士にも2種類あります。
1.資格取得後、一度も保育園や幼稚園に勤めたことがない人
2.保育園や幼稚園に勤めたが、いまは勤めていない人
この潜在保育士さんたちを現場へ戻そうとする努力も行政区ごとに行っています。
例えば埼玉県さいたま市では、「在保育士再就職支援セミナーを開催します!」と題して保育士有資格者の専門的な知識・技術力の回復、習得を目的としたセミナーを開催し、子どもと関わり、子どもの日々の成長を見守る保育のしごとを希望する方々を支援しています。処遇改善に加えて、仕事の面白さ、一度現場を離れた方への再就職支援など様々な視点から改善が必要です。
自治体の処遇改善に対する動き
国による処遇改善の特徴は、私立の認可保育園などに勤める多くの保育士が対象になることが特徴です。2015年以降は国として保育士の給与アップにつとめています。
例えば、埼玉県さいたま市では、保育所を運営する社会福祉法人等に施設の運営改善と児童、職員の処遇改善を図ることを目的とし、市独自で上乗せ補助を行っています。
例として、
さいたま市は東京都に隣接していますので、なんとか県内で保育士として働いてほしいという意識があります。
処遇改善という場合に、大きく2つに分けることができます。一つは、給与に反映される経済的待遇改善、もう一つは、働きやすさに反映される労働待遇改善です。政府は経済的待遇改善に注力していますが、併せて、労働待遇についても改善が必要です。
では、働きやすさとはなんでしょうか。
休日が多いこと?
定時に帰れること?
人間関係がいいこと?
保育士は「対人援助職」に分類されます。目の前にいる園児、その保護者、ひいては地域住民とその支援は広範囲にわたります。
処遇改善は自分で仕事のやり方を改善することも含まれます。一度、ご自身の仕事の仕方を見直してみるよい機会だと思います。
<橋本圭介さんによる過去の記事>
ついに始まる「保育・幼児教育無償化」働く保育士や幼稚園教諭に与える影響とは?
https://ohana.hoiku-hiroba.com/post/608
保育士のキャリアアップ研修を活用して給料アップを狙いましょう!
https://ohana.hoiku-hiroba.com/post/611
<参考サイト等>
●保育士処遇改善4万円の配分詳細等について(内閣府・文科省・厚労省連名4月27日通知のポイント)
http://www.liferich.jp/nursery-notification
●施設型給付費等に係る処遇改善等加算について
https://bit.ly/2K8gNiU
●さいたま市では、市独自で民間保育園の職員給与に上乗せ補助しています!
https://bit.ly/2STOmbb
記事公開日:2019.08.05
記事更新日:2021.07.12