2019.07.22
ついに始まる「保育・幼児教育無償化」働く保育士や幼稚園教諭に与える影響とは?
2019年10月よりついに実施される予定の「保育・幼児教育無償化」ですが、一番気になるのは保育士・幼稚園教諭自身にはどのような影響があるのか?というとこですよね。
今回は「保育士の基本スキル」などの本を執筆されている橋本圭介さんが、無償化によって園の環境やそこで働く人にどのような変化が出てくると思われるのかをわかりやすく解説します!
2019年10月から「改正子ども子育て支援法」の成立を受けて、幼保無償化(幼児教育・保育が無償化される)が実施される予定です。今回はその幼保無償化について、保育士さんが知っておくべきことをまとめました。
幼保無償化の概要
2017年冬、政府は幼児教育の無償化などを柱とした、2兆円規模の「人づくり」のための新たな政策を閣議決定しました。その趣旨は、
・幼児教育の負担軽減を図る少子化対策
・生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の重要性
であるというのが政府の考え方です。
幼保無償化の財源について
この無償化した分の運営費用などですが、10月から予定されている消費増税による増税分を集中的に投入するということです。
また、自治体の負担軽減に配慮しつつ国と地方で適切な役割分担を基本としています。
具体的には、国1/2、都道府県1/4、市町村1/4。ただし、公立施設(幼稚園、保育所及び認定こども園)は市町村等10/10という割合を予定しています。
幼保無償化についての議論
今回の幼保無償化については、さまざまな議論が沸き起こっていますので、いくつか紹介します。
など、対策の優先順位に対する懐疑的な意見や、不公平だという議論があり解決するべき事項です。
対象となる保育施設は何?
① 新制度の対象とならない幼稚園については、月額上限2.57万円まで無償化
(注:国立大学附属幼稚園0.87万円、国立特別支援学校幼稚部0.04万円)
② 開始年齢は原則、小学校就学前の3年間を無償化
(ただし、幼稚園については、学校教育法の規定等に鑑み、満3歳から無償化)
③ 各種学校については、児童福祉法上、認可外保育施設にも該当しないため、無償化の対象外
④ 保護者から実費で徴収している費用(通園送迎費、食材料費、行事費など)は、無償化の対象外
食材料費については、保護者が負担する考え方を維持。
給食費は対象外
無償化といっても、給食費は無償化の対象外としています。具体的には、主食費+副食費も自己負担となります。
さらに、その徴収方法は各園で保護者から徴収となります。となれば、その徴収において、事務作業や滞納者への対応と業務が増えることへの不安が多くなっています。それについて、東京都民間保育園協会では、一律徴収した後で自治体から還付するなど、事務作業軽減策などの配慮を求めています。
その他施設への対応
幼稚園、保育園、認定こども園以外の保育施設への対応はどのようになっているのでしょうか。
幼稚園の預かり保育
保育の必要性の認定を受けた場合、幼稚園に加え、利用実態に応じて、月額1.13万円までの範囲で無償化。
◎保育の必要性の認定:2号認定又は2号認定と同等の認定(無償化給付のために新たに法制化)
◎預かり保育は子ども・子育て支援法の一時預かり事業(幼稚園型)と同様の基準を満たすよう指導・監督
認可外保育施設への対応
本題に入る前に、認可外保育施設について説明します。
認可外保育施設とは、児童福祉法に基づく都道府県知事などの認可を受けていない保育施設のことで、
平成28年度の認可外保育施設の総数は、6,558か所(前年度比 365か所の減)とその数は減っています。
なお、このうち
①夜8時以降の保育、②宿泊を伴う保育、③一時預かりの子どもが利用児童の半数以上
のいずれかを常時運営している 施設については、「ベビーホテル」といいます。
認可外保育施設とは言え、現実的には、「3~5歳:保育の必要性の認定」を受けた場合、認可保育所における保育料の全国平均額(月額3.7万円)までの利用料を無償化の対象としています。
就学前の障害児の発達支援
就学前の障がい児の発達支援施設についても無償化の対象としています。
・就学前の障害児の発達支援を利用する子供たちについて、利用料を無償化
・幼稚園、保育所、認定こども園等とこれらの発達支援の両方を利用する場合は、ともに無償化の対象
無償化に伴い問われる「保育の質」
今回の無償化において、「保育の質の担保」が課題になっています。
この課題は認可外保育施設においての保育の質のことです。
認可外保育施設への無償化は、人員配置や設備基準健康診断の実施など厚生労働大臣の指導監督基準を満たすことが条件になっています。
しかし、この制度が始まってから5年間の猶予があります。
厚生労働省の2016年に行った立ち入り調査では、全体の4割が基準を満たしていませんでした。
2015年~2017年の認可外保育施設での死亡事故は21件(認可保育所は9件)であり、「きちんとやっている認可外保育施設もあるが、認可と比較すると質が低い」と指摘されています。
しかし、上記のような問題がある一方で、次のようなメリットもあると指摘されています。
新しい制度を始めるときは、必ず賛否両論が起こります。
大切なことは、子どもにとって何が最善の利益になるかという視点です。
保育施設は、認可、認可外、営利、非営利を問わず、子どものための施設であるということを忘れてはいけません。
<参考サイト等>
●幼児教育無償化の制度の具体化に向けた方針の概要
https://bit.ly/2Z34c5f
●幼児教育・保育の無償化 内閣府
https://bit.ly/2Lzasi5
●幼児教育・保育の無償化について 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_01659.html
●幼児教育・保育の無償化の全体像 さいたま市
https://www.city.saitama.jp/003/001/009/p061807.html
●幼児教育・保育の無償化に必要な手続き(施設等利用給付認定申請)のご案内
https://www.city.saitama.jp/003/001/009/p065720.html
●子育て支援 見切り発車
毎日新聞 2019年5月11日
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記事公開日:2019.07.22
記事更新日:2021.07.12