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2019.10.10

【理解を深める!】「保育士不足」その現状がどうなっているのかご存知ですか?

2016年に「保育園落ちた日本死ね!」というブログから政府も危機感を感じ、本腰を入れてその対策に追われています。
今回は、保育士不足について様々な角度から検証し、どうすることで保育士不足を解消できるかを考えてみます。

保育士不足は単に保育士の人数が足りないだけではなく、待機児童問題とも深くかかわっているのです。

橋本 学校法人三幸学園
 大宮こども専門学校専任講師
 小田原短期大学非常勤講師

 橋本 圭介

 

保育士不足になった原因・・・

いつのころからか、保育士が足りないということが表面化してきましたが、単純に考えて、保育園数や園児数に対して国の基準で必要な保育士の数が足りていないということです。
何が保育士を減らしているのでしょうか?減らさないまでも増えないのか?を検証してみましょう。

よく言われることとして

  • 給料が低い
  • 業務量の多さ
  • 希望する就業時間と実際の就業時間が合わない
  • 人間関係の複雑さ
  • 給料に見合わない責任の重さ が挙げられます。どれも適正な理由です。

上記の理由は、保育士だけの課題ではなく、対人援助職全体の課題です。
人間はいやだと思うといやな理由しか探しません。
またこれに加えて年功序列を規準とした人事考課の不明確さがあります。
これではどんなに努力しても評価されないという意識が生まれます。

実際どのくらいの保育士が足りないのか

保育士不足とは言われますが実際どのくらい足りていないのかを検証してみましょう。厚生労働省のデータをまとめると・・・

上記はあくまでも厚生労働省のデータですので、現場でのひっ迫感はもっと高いものです。
明日の保育をどうするか?というところまで追い込まれている園もあります。

潜在保育士の現状

保育士資格を持ち登録されているが、社会福祉施設等で勤務していない者を「潜在保育士」と呼びます。
厚生労働省のデータによると、正確な数字をつかむのが難しいためが70万人以上とも言われています。

保育士就労経験がある潜在保育士が保育士を辞めた理由

①家庭生活や出産・育児との両立が難しかった 36.4%
②給料が安かった 32.9%
③勤務時間(残業含む)が長かった 27.3%
④職場の人間関係が難しかった 26.7%
⑤事務業務(指導計画や保育日誌の作成など)が負担だった 20.3%
⑥その他(結婚、妊娠・出産、配偶者の転勤など) 20.0%

⑦責任の重さ・事故への不安が大きかった 16.8%
⑧勤務日・勤務時間が不規則だった 16.2%
引用:https://www.nri.com/jp/knowledge/report/lst/2018/cc/mediaforum/forum270

保育士として働き始めることを考える上での魅力的な就労環境だと思うもの(保育士就労意欲を持つ保育士)

①短時間(1日3~4時間程度など)から働ける 75.1%
②平日のみ開園(土日祝日は完全に休み) 61.9%
③少人数の保育園で、子ども1人1人にゆっくり向き合える 60.2%
④早朝保育・夜間保育がない 37.7%
⑤新規開所で、スタッフの人間関係が新しい 31.3%
⑥自分の子どもも預けることができる 29.5%
⑦低年齢児(2歳までなど)のみ 27.3%
⑧駅から近く、通勤に便利 26.3%
引用:https://www.nri.com/jp/knowledge/report/lst/2018/cc/mediaforum/forum270

現場ではフルタイムの保育士を求めており、潜在保育士たちは短時間労働を希望していますので、そもそもの労働条件が合わないことが現場に戻りたくても戻れない要因のひとつです。

保育士不足でどのような問題が起きているか

 

_グラフ3

園舎を建て、園児募集も終わり、いよいよというときに、保育士が足りないという事例が多くみられました。
保育士が足りないことで現場の保育士ひとりにかかる業務量が単純に増加し、休職退職に繋がりやすくなっています。

また、保育士不足を必要以上に報道するマスコミは、不足している仕事は魅力がないというようなトーンで報じています。
園児の事故があれば、保育士の責任を必要以上に問うような報道。
これでは、保育士を目指そうという意識は薄められてしまいます。

それは現場で懸命に園児たちの発達に少しでも寄与しようとしている保育士たちの士気を下げ、信用を失墜させることと同じです。

一方で現場の保育士たちもその専門性の高さについて自ら声をあげていく活動も求められます。

実際の保育士養成の現場から

指定保育士養成施設卒業者のうち、約半数は保育所に就職していません。
また、保育士資格を有しながら保育士としての就職を希望しない求職者のうち、半数以上が勤務年数5年未満であり、早期離職の傾向も顕著です。

私が所属している養成校でも大方上記の数字通りです。

保育科というとその将来を、保育所保育士をイメージし、幼児教育科というと幼稚園教諭をイメージすると感じています。
養成校において学生の進路指導をする際に心がけているのは、本人の方向性を知らず知らずのうちに誘導しないように気をつけています。
今の学生の傾向は「先生、どこかいい保育園ないでしょうか?」というなんとも漠然とした相談の仕方をしてきます。

考えてみれば、つい最近まで高校生だった学生が大半で、2年間で急成長して自分の進路を自分の力で切り拓いていける学生はそういません。
それだけ養成校の心理指導担当者は肝に銘じて指導することが求められます。
いつまでに内定率を何パーセントにせよという数字遊びになっては学生の最善の利益が確保できません。

(厚生労働省 保育人材確保のための『魅力ある職場づくり』に向けて)

保育士確保に何をしているのか

平成27年1月、厚生労働省は保育士不足の現状を鑑み「保育士確保プラン」を発表しました。その内容は次のようなものです。

_グラフ2

  (Ⅰ 人材育成 Ⅱ 就業継続支援 Ⅲ 再就職支援 Ⅳ 働く職場の環境改善)

どのプランも効果がありそうなものばかりですが、実際にどのような効果が出てきているかを正確に測定することが求められています。
私は、保育士国家試験対策講義も担当しています。
年2回(一部地域は年3回)となって受験生には有利になったと思いますが、実際には受験機会を2回にしてそれだけの保育士を輩出したのか、それが現場の保育士不足が解消できたのかを考えると、各回の合格率が上昇しないことからあまり効果があるようには感じていません。

また、保育士養成施設で実施する学生に対する保育所への就職促進を支援【人材育成】については、養成校の保育所への就職担当としては就職促進への支援は職業選択の自由に基づく学生の自由意志を指導原則としていますので、特に保育所保育士への就職促進を強く意識していません。

平成27年から開始されたこのプランは効果がでるまでもう少し時間が必要であると感じています。

まとめ

保育士が足りなければ保育園は開園できませんし、実際の保育もたちゆきません。
それは誰が一番不利益を被るかと言えば、園児たちです。
保育士不足、待機児童、就学前の子どもたちを取り巻く状況は年を追うごとに厳しくなっています。
保育園は誰のための施設なのでしょうか。

 

参考文献

記事公開日:2019.10.10

記事更新日:2019.10.10