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2019.09.09

株式会社と社会福祉法人の違いを正しく理解して自分に合う保育園を選びましょう

株式会社と社会福祉法人の違いを正しく理解して自分に合う保育園を選びましょう

橋本 学校法人三幸学園
 大宮こども専門学校専任講師
 小田原短期大学非常勤講師

 橋本 圭介


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児童福祉施設である保育所は、第二種社会福祉事業に分類されます。
第二種社会福事業の条件は、通所施設であること、そして、その施設の運営主体に制限がないことです。
このように様々な運営主体の保育園がありますが、どの形態でも子どもの最善の利益を追求しています。

 

 

保育園を運営する様々な団体

保育園を運営する団体にはさまざまなものがあります。



全体の52%が社会福祉法人立に、次いで、公立の38%、会社立の5%です。園数としては、圧倒的に社会福祉法人立が12,268件と多くあります。

 

営利団体が保育園経営に参入した背景

公立と社会福祉法人以外の保育園ができたのはいつぐらいなのでしょうか。

保育所の待機児童問題が表面化した2000年当時に、認可保育園の設置主体を解禁し、社会福祉法人以外の団体でも設置できるようにしました。
それまでの、公立、社会福祉法人などのいわゆる非営利集団による運営だけでは待機児童問題を解決することができないと判断されたためです。
また、株式会社立に代表される営利集団による保育園運営は経済効果を生む可能性も秘めているとも考えられました。

しかし、実際にスタートしてみると、一部の自治体では、株式会社の参入を認めないケースが出てきました。
そこで、2012年の「子ども子育て関連三法」で、過剰にならないことを条件に原則、参入を認めることとなり、株式会社立の保育園が設置されるようになりました。

 

設置主体別保育所数の実際

前述で全体的な数字をはじき出してみましたが、ここでは、私が勤務する大宮こども専門学校がある、埼玉県を事例にします。
埼玉県内の認可保育施設は、1,268か所あります。


全国の比率に比べると、埼玉県は社会福祉法人立が76%という高い割合を占めています。次いで、公立、そして株式会社の順で、まだまだ営利団体が保育園を運営する気運は低いと解釈できます。

 

公立保育園の運営が民間団体に委託されている

ここ数年、公立の保育園を民間団体へ委託する動きがあります。
東京都東久留米市では、将来的には全部の公立園を私立園にしていくという方針に転換していますので、その詳細をみてみましょう。

同市の主訴では、市立保育園と民間の保育園とが担う役割に違いはないことを前提にしています。そのうえで以下のような効果があると説明しています。

・公的費用を発生させずに市立保育園の老朽化への対応といった課題が解決できる
・多様なニーズに応える保育サービスが提供できる。
・保護者の保育への選択肢が拡大する。
・保育園の運営にかかる経費の縮減が図れる。

民間の力を活用することによって、そこに新しい雇用が生まれ生産性が上がってくることは事実です。
仮に、入札制度を採用すれば、その費用対効果に期待が持てます。

しかし、その一方では、障害児への保育についての保育の質の低下という懸念が出ています。
公立園の方が民間園(特に、株式会社立の保育園)よりも、長年培ってきたノウハウの蓄積があります。
そのため、全国的には各行政区で、公立園を一部の残そうという動きもあります。

 

就職するなら営利VS非営利どっち?

学生から就職するなら社会福祉法人と株式会社とどっちがいいのかと聞かれることがありますが、いずれの運営主体であっても、メリットとデメリットが存在します。結論から言えば、どちらがいいという判断は下せません。

たとえば、認可保育施設と考えると公立や社会福祉法人の非営利も、株式会社立などの営利も、認可基準は同じです。しかも、認可基準の中に運営主体についての記述はありません。

つまり、規準さえ満たしていれば認可となり得ますが、その基準の中には保育の質についての項目がありません。保育の質は当然のように担保されているという性善説が成り立っています。

 

営利と非営利のメリット、デメリット

働く上での具体的に営利と非営利のメリットとデメリットをまとめてみます。
どちらが自分に向いているのかを見極めて適した保育園で働けるといいですね。
しかしどちらにしても、保育園は子どものための施設であり、保育士は子どもの最善の利益を追求しながら、園児の発達保障と保護者支援を進めていく施設ということには変わりありません。

非営利団体のメリット、デメリット


全国の社会福祉法人が運営している12,268の保育園の多くは長きにわたって保育園を運営しています。
その分、経営と運営に安定感があります
ここでいう安定感とは、保育の内容が長年の蓄積による安定感、例えば、長い間運営していますから地域住民への知名度、理解度も高く、例えば三代にわたって同じ保育園を卒園しているなど。
また、行政からの補助金があったり、非課税だったりと、営利立よりは多少優遇されていて、その点での財政的な安定感もあります。

しかし一方で、長年運営しているからこそ園の運営が保守的である可能性もあります。

営利団体のメリット、デメリット


株式会社が保育園を経営・運営できるようになったのは、2000(平成12年)年からとその歴史は浅く、さまざまな課題があります。
私が就職指導をしていて感じるのは、株式会社は利益追求第一主義になってしまい保育や福祉にはそぐわないではという世間の偏ったイメージです。
残念ながら、まだ一部の養成校の指導者たちは何の根拠もなく、株式会社の保育園についてネガティブなイメージをもち、それを学生の就職指導の柱としてしまっている現実もあります。

ぜひ保育園側からも、ネガティブなイメージをきちんと払しょくして株式会社の保育園ならではの良さを発信してもらいたいと思います。
さもないと懸命に企業努力しても、子どもの最善の利益と保護者支援を進めている保育園の価値を下げてしまう危険性があります。

 

保育園の運営経営主体の違いを見てきました。
主体が違えばその経営、運営は違います。同じ社会福祉法人立でも法人よって違います。

ではどこを見ればいいのかといえば、日々の保育実践です。
どこまで子どものためにやれているか。
よく「保育に正解はない」と言われますが、正解がないからこそ、保育所保育指針に沿いつつ自分たちでより良い保育を作っていくことが求められています。
子供たちにしてみれば、自分たちが生活する保育園の運営主体は関係ありません。一日、楽しく成長し、発達する場所、それが保育園です。

 

<橋本圭介さんによる過去の記事>
発達保育の基本スキル-保育士はどうやって現場で発達支援をしているか-
https://ohana.hoiku-hiroba.com/post/646

本当に給料上がってる?保育士の待遇改善についてきちんと知っておきましょう!
https://ohana.hoiku-hiroba.com/post/627

保育士のキャリアアップ研修を活用して給料アップを狙いましょう!
https://ohana.hoiku-hiroba.com/post/611

ついに始まる「保育・幼児教育無償化」働く保育士や幼稚園教諭に与える影響とは?
https://ohana.hoiku-hiroba.com/post/608

<参考サイト等>
●幼稚園及び保育所の設置主体と運営主体の関係について

https://bit.ly/2MKGXtH
●平成28年 市区町村・設置主体別保育所数
https://bit.ly/2Tfy64r
●「幼児教育・保育分野への株式会社参入を考える ―諸外国の動向をふまえて―」
『J R Iレビュー』2013 Vol.4, No.5 調査部 主任研究員 池本美香

記事公開日:2019.09.09

記事更新日:2021.07.14