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2021.03.22

「HSC」とは?クラスの5人に1人はHSCかもしれません

「HSC」とは?クラスの5人に1人はHSCかもしれません

高野あゆみ 高野 あゆみ(たかの あゆみ)
 HSC幸せ子育てサロン代表・2児の母
 心理カウンセラー・保育士資格所有
 娘の激しい登園渋りがきっかけでHSC
 を知り、HSC支援活動を行う。

【HSC幸せ子育てサロン】http://hsc-kosodate.com/
【Blog】http://hsc-kosodate.com/category/blog/

「慎重で行動するのに時間がかかる」
「園の行事が極端に苦手」
「かんしゃくやわがままが多い」
「人の気持ちによく気が付く」
「年の割に大人びていて扱いづらい」

みなさんのクラスには、このような子はいませんか?

もしかしたら、その子たちはHSCかもしれません。HSCというのは、ひといちばい敏感な気質を持つ子のことで、なんと5人に1人はいると言われているのです。

いきなりHSCと言われても「なんじゃそれ・・?」ですよね。

そこでこの記事では、保育士のみなさんが知って役立つHSCの基礎知識についてご紹介します。HSCの娘を育て、HSC親子のサポート活動をしている私が、できるだけ分かりやすく解説していきます。

ちょっと手のかかる子への理解が深まって、クラスの子どもたちの見方がガラっと変わると思いますよ!

 

 

HSCって何?

まずは、HSCの基本的なことについてお伝えします。
HSCはHighly Sensitive Childの略で、日本語では「ひといちばい敏感な子」といいます。

持って生まれた気質

Ohana記事①写真1

HSCは病気や障がいではなく、持って生まれた気質です。どんな子も、生まれたときから「おだやか」とか「主張が強め」とか、それぞれタイプがありますよね。それと同じように、HSCは「ひといちばい敏感」という気質をもっています。生まれつき、よく気が付いて深く考えてから行動します。

HSCは、発達障がいと似たような特徴を示すことがあるため、医師や専門家から「発達障がいのグレーでしょう」と言われることも多いのですが、発達障がいとは違います。

5人に1人

HSCは、子どもの5人に1人はいると言われています。男女の差はありません。30人のクラスであれば、5~6人はHSCかもしれません。

 

HSCは具体的にどんな子?

HSCは「ひといちばい敏感」とお伝えしましたが、具体的にはどんな子なのでしょうか?
HSCの4つの特徴に分けて紹介します。

①深く考える
②刺激を受けやすい
③感情反応が強く共感力が高い
④小さな刺激も気が付く

特徴① 深く考える

HSCの1番の特徴が、深く考えるということです。

例えば、レストランで音楽が流れていたとします。耳から聞こえる音の大きさは他の子と同じなのですが、HSCの子どもは聞こえてきた音について深く考えています。

「この音楽は悲しそう」
「なんの楽器だろう」
「どこから聞こえてくるんだろう」
「あの時聞いた音と同じだ」
といった具合です。

普通なら聞き流してしまうようなレストランの音楽ひとつとっても、HSCは深く考えているのですね。

色々な出来事について深く考えているため、行動するまでに他の子よりも時間がかかったり、年齢の割に大人びたことを言ったりします。

特徴② 刺激を受けやすい

2つ目は、刺激を受けやすいということです。

これはよく、魚を捕る網に例えられるのですが、HSCの持っている網は、目がとーっても細かいのです。網の目が大きければ、小さな魚はすり抜けてしまいます。しかし、HSCの網の目は細かいので、小さな魚ばかりでなく必要のないものまで色々ひろってしまいます。だから、網がとても重くなってしまうし、引き揚げるのにも疲れてしまいます。

どんな刺激を受けやすいのかは、子どもによってそれぞれ違います。音、暑さ寒さ、明るさ、服の素材、痛み、味、匂い、人の気持ち、笑いなど。

服のタグが「チクチクする」と言って着ない子や、小さなすり傷があるだけで何も手につかなくなる子もいます。

また、こんなエピソードもよく聞きます。子どもが行きたいと言っていた遊園地に連れて行ったのに、しばらくすると子どもが不機嫌になってしまい「帰りたい」と言い出す・・。大人は「せっかく連れてきたのに~」と思ってしまいますけどね。

嫌な刺激だけでなく、楽しい刺激でも、キャパオーバーになってしまいます。

特徴③ 感情反応が強く共感力が高い

3つ目は、感情反応が強く共感力が高いことです。

感情反応が強いというのは、嬉しい、楽しい、怖い、悲しい・・という気持ちの感じ方が、人よりも強烈だということです。それから、高い共感力をもっていて、他の人が何かを感じているのを見ると、まるで自分がそう感じているように覚えます。

クラスで先生が他の子を叱っているのを見ると、自分が叱られているようで辛い、というのは、HSCの親同士で話しているとよく出てくる事例です。

HSCの娘は、駅のホームでおばあちゃんが杖をついて歩いているのを見て
「あのおばあちゃん、腰が痛いのかな?かわいそうだね。きっと痛いよね。」と言っていました。

このように、初めて会った人でも辛い気持ちによく気付きます。高齢者や赤ちゃん、時には動物の気持ちに共感することもあると言われています。

特徴④ 小さな刺激にも気が付く

4つ目は、小さな刺激にも気が付くということです。

普通の人なら気付かないようなこと、大したことないと見過ごしてしまうような、小さな音、わずかなにおい、人の髪型、場所の変化に気が付きます。とっても高度なセンサーをもっているイメージです。

例えば、お部屋の掲示物を少し変えただけでも「あ、ここ変わってる」と気付いたり、何も言ってないのに「怒ってる?」と気付いたり。もうすぐ地震がくることに気付く子もいます。

 

HSCは自己肯定感が下がりやすい

Ohana記事①写真2

HSCは、ここまで見てきたような敏感な気質をもっているため、保育園や幼稚園、学校などの集団生活でうまくいかないことが多く、自己肯定感が下がりやすい傾向があります。

「私はみんなと同じようにできない」「上手くできない自分はダメなのだ」と感じてしまうのです。

◆自己肯定感とは?
「自分は大切な存在なんだ」「良い部分も悪い部分もひっくるめて、愛されているんだ」「私は私でいいんだ」と思えていること。つまり、自分の存在に対する自信で、心の成長の土台となります。

特に日本は、みんなと同じであることがよい、同じでないといけないという同調圧力が強いですね。

「おかしいな。どうして○○ちゃんは出来ないんだろうな~?」
「周りを見てごらん。みんなやってるよー。」

このように、ちょっとした注意のつもりで声かけをしたとしても、HSCは自分を全否定されたかのように、「私はダメな子なんだ」と非常にネガティブに受け取ってしまうことがあります。

世の中の一般的なやり方は、HSCにとっては少し刺激が強いのですね。

 

その子らしさを受け入れて味方になってあげることが大事

HSCが持って生まれた「気質」は、基本的には大人になってもずっと変わりません。

でも、「気質」が原因で苦しい人生を送るか、幸せな人生を送るかは、HSCの子どもが育つ環境によって大きく変わります。特に、幼少期の環境はとても重要です。

HSCが幸せな人生を送るために一番大切なのは、「気質」を治そうとすることや、克服させようとすることではありません。

”近くにいる大人が、子どもを受け入れて味方になってあげること”です。
HSCは、自分を受け入れてくれる味方がいて、安心できる環境では驚くほど才能を発揮します。

 

 

いかがでしたか。

HSCの基礎知識についてお伝えしました。クラスの中で「もしかしたら、あの子はHSCかもしれない」という子が何人か思い浮かんだかもしれません。

HSCを知った親からは、「うちの子はまさにこれだ!」「今までどこか周りとは違うと思っていたけれど、これでようやく腑に落ちた!」という声が多く聞かれます。

保育士のみなさまも同じように、日々子どもたちに関わっている中で、「この子はどうしても手がかかるな、どうしたら良いんだろう」と感じることがあると思います。そんな子どもたち1人1人に寄り添い、理解するためのヒントとして、ぜひHSCを知っていただきたいと思っています。

私も、HSCの娘を育てる親として実際に経験しましたが、HSC(ひといちばい敏感な子)のことを深くを知ると、子どもの見方が変わり、子どもへの対応のしかたが変わり、子ども自身が変わってきます。HSCに限らず、すべての子にとって大切なことを学ぶことができます。

HSCの周りに安心できる味方が増え、子どもが自分らしく輝ける世の中になることを願っています。

 

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記事公開日:2021.03.22

記事更新日:2021.07.15