2021.10.27
保育士の実技試験内容や見られるポイント・対策法を徹底解説
保育士の実技試験と聞くと、弾き歌いや読み聞かせをイメージするのではないでしょうか。
詳しい試験内容や実技試験の合格率なども含め、試験合格のための具体的な方法をご説明します。
保育士の実技試験とは?受験資格・流れ
保育士の資格を取得するためには、大学や専門学校などに通って卒業する方法と、国家試験を受験して取得する方法の2通りがあります。
保育士の実技試験は保育士国家試験で実施されます。
知識があれば合格できる筆記試験と異なり、実技試験では保育士としてのさまざまな表現力が求められるため事前の練習や対策は必須です。
試験は年に2回、4月と10月頃に実施されており、試験会場は全国に設置されていますので、お住まいの近くの会場にて試験を受けることができます。
必ずしも住んでいる都道府県で受ける必要はなく、受験申請書に希望受験会場を記入して提出すれば、全国どこでも受けることが可能です。
しかし、まず保育士試験は誰でも受けられるわけではありません。
条件を満たした人のみ保育士試験の受験が認められていますので、試験が受けられるかどうか確認しておきましょう。
実技試験の受験資格は、筆記試験に合格した人だけ得ることができます。
筆記試験は全部で9科目あり、全科目で100点満点中60点以上正解しなければなりません。
全ての筆記試験に合格すると、後日筆記試験合格通知書とともに、実技試験受験票が自宅に届きます。
実技試験受験票は、筆記試験を受けた約1ヶ月半後くらいに送られてきますので、気長に待ちましょう。
受験票が送られてきたら、封を開けて自分が選択した実技試験の分野が正しく記載されているかどうか確認してください。
保育士の実技試験の種類とそれぞれの内容
保育士の実技試験の分野は「音楽」「造形」「言語」と全部で3つあります。
3つの中から自分で2つ選ぶことができますので、得意分野を選択するようにしましょう。
実技試験は1分野が50点満点で、2分野とも30点以上取ることができれば合格です。
試験の内容をそれぞれ詳しく解説します。
音楽に関する技術
音楽では、課題曲を2曲、ピアノ、アコーディオン、ギターの中から自分のできそうな楽器を選択して弾き歌いをします。
参考までに、令和3年度の課題曲は「あひるの行列」と「ゆりかごの歌」でした。
課題曲は毎年知名度の高い童謡が多く、曲の難易度も低めなので練習しやすいでしょう。
試験会場に用意されている楽器はピアノのみなので、アコーディオンとギターを選んだ人は自前の楽器を持っていかなければなりません。
受験申請書に楽譜が添付されているので、その楽譜のコードを元に演奏します。
コードやメロディーをアレンジしても良いのですが、自分のレベルに合った伴奏にしましょう。
前奏はつけてもつけなくてもどちらでもよく、キーが合わない場合や弾きにくいときは移調しても構いません。
造形に関する技術
造形の実技試験では、制限時間45分以内に色鉛筆で絵を描きます。
テーマは試験当日まで分かりません。
造形は事前に練習することができないため、実技試験の中でも難易度が高いといえます。
令和3年度の造形課題は「砂遊び」でした。
しかし「砂遊び」というテーマが与えられるのではなく、子どもが砂遊びをしているイメージが湧くような問題文が提示されるのです。
条件には、シャベルやスコップなどの道具を使うこと、園庭で遊んでいること、子供と大人の人数などが指定されています。
言語に関する技術
言語の試験では「3歳児に3分間お話を聞かせる」という課題となっています。
4つのお話からひとつを選択し、子どもが15人ほど目の前にいることを想定して一般的なあらすじを元に自分でストーリーを考えてまとめます。
令和3年度のお話は以下の4つです。
● おむすびころりん
● ももたろう
● 3びきのこぶた
● 3びきのやぎのがらがらどん
試験会場に絵本や道具を持ち込むことは禁止されています。
お話をするだけではなく、身振り手振りを加えて子どもが集中して楽しめる空間を作ることが大切です。
保育士の実技試験の合格率
保育士国家試験は難易度が高いと言われています。
ですが、実技試験は筆記試験に比べると合格率が高いので、難関は筆記試験と言えるでしょう。
厚生労働省から保育士試験の合格率のデータが公表されていますので見てみましょう。[注1]
実技試験の合格率はとても高く、過去のデータを見てみると毎年半数以上の合格者を出していることが分かります。
令和2年度の前期試験では、新型コロナウイルスの影響により筆記試験が中止となりました。
そのため実技試験のみが行われたわけですが、合格率は75.3%でした。[注2]
表を見ていただけると分かる通り、保育士試験は筆記の難易度が非常に高いのです。
毎年20%ほどの合格率なので、かなり難しい試験内容となっています。
筆記試験に合格しない限り、実技試験を受けることすらできませんので、まずは筆記をクリアする必要があります。
8割近い合格率である実技試験であっても、気を緩めずしっかり対策を行った上で挑みましょう。
保育士の実技試験で見られるポイント
実技試験の3分野は、どれも実務で必要とされるものです。
試験当日は、実際に子どもがいるわけでもない中、歌や読み聞かせを大人に向けて行うためとても緊張しますが、笑顔を忘れず練習の成果を発揮しましょう。
音楽試験のポイント
音楽の実技試験では楽器を上手に演奏し、音を外さずに歌うことが求められているわけではありません。
全く弾けずに最後までやりきれないレベルだと心配ですが、大事なことは子ども達を見ながら楽しく歌っているかどうかです。
なので、難しいアレンジをしたり自分のレベル以上の伴奏を披露する必要はありません。
試験では実際に子どもはいませんが、目の前に子どもがいるかのように弾き歌いすることが重要です。
仮に間違えたり緊張のあまり手が止まってしまっても、落ち着いて最後まで弾き歌いしましょう。
造形試験のポイント
造形試験もプロのように上手な絵を描く必要はありません。
試験で重要なポイントは、課題の条件をすべて満たしているか、情景や人物がイメージ通り豊かに描けているか、絵の中の人物が生き生きと描かれているかです。
黒色の塗りつぶしは暗い印象を与えてしまいますので、なるべく黒は避けましょう。
例え髪の毛や砂場など黒を使いたい部分であっても、茶色やクリーム色などを使用し、全体的に明るいイメージで仕上げることを意識してください。
言語試験のポイント
言語の実技試験では、発声ができているか、豊かに表現できているか、子どもに対する話し方ができているかが見られています。
3分の間、絵本や道具など何もない中、声だけで物語を伝えなければなりません。
目線の配り方や、声の抑揚、テンポなどを工夫し、子どもの顔を見ながら語りかけるようにお話すると好印象です。
時間配分も重要ですので、ちょうど3分で終わらせることができるよう何度も繰り返し練習しましょう。
保育士の実技試験を合格するための対策
音楽に関する技術の試験対策
楽器を演奏しながら歌をうたうことは、意外と難しいものです。 試験当日までたくさん練習をし、できる限り弾き歌いに慣れる必要があります。
試験官の前で弾き歌いをすると緊張するため、テンポがどんどん早くなってしまうことも考えられます。
「早くなっていないかな?」と頭の中で確認しながら、練習の際も一定のテンポで弾くことを意識して元気よく歌いましょう。
造形に関する技術の試験対策
造形の試験で出題されるテーマには必ず子どもが複数人と保育士が登場します。
平成26年度の試験からは子どもの年齢も指定されるようになったため、同じ子どもでも1歳児と5歳児とでは明確に違いが分かるよう描く必要があるでしょう。
頭と体のバランスを調整することで、異なる年齢で描き分けることができます。
例えば、1歳の子どもなら2頭身、4~5歳であれば3頭身くらいに調整すればバランス良く描けるのではないでしょうか。
登場人物も5名以上で指定される時がありますので、全員同じ顔にならないよう、さまざまな表情が描けるように練習しておくことが大切です。
また、人物と一緒に机や椅子、遊具や小道具なども描くことも多いので、日常風景も描けるようにしておきましょう。
言語に関する技術の試験対策
子どもに集中してお話を聞かせることを想定した試験ですので、子どもが飽きることなく楽しめるようにお話をアレンジする必要があります。
3歳児の設定なので、お話を複雑にアレンジするよりも擬音や繰り返し表現を入れ込んだり、分かりやすい言葉を使いましょう。
3分間でお話を完結させるためには、大体800文字程度のシナリオが必要です。
しかし、人は緊張すると早口になってしまうため、練習でちょうど良いくらいだと3分より早く終わってしまうかもしれません。なるべくゆっくりを心掛けてお話するようにしてください。
実際声に出して練習をするときは、録音して客観的に自分の声を聞いてみることをおすすめします。
まとめ
保育士の実技試験は対策をしっかり行えば合格できます
保育士の実技試験は3分野から2つ選択して試験を受ける形式なので、自分の得意分野を選ぶことが大切です。
実技試験は筆記試験より難易度が低いため、対策を練って繰り返し練習を行えば高い確率で合格することができるはずです。
本記事でご紹介した対策法や試験で見られるポイントを把握して実技試験合格を目指しましょう。
記事公開日:2021.10.27
記事更新日:2021.10.27