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2019.12.16

保育士国家試験について

保育士の資格を取得するためには養成校へ最低2年通って保育所実習や児童福祉施設実習を修了して卒業と同時に取得できる場合と、国家試験で取得する場合があります。
私は、養成校の教員でもあり、国家試験対策の学校でも受験対策を担当しています。
養成校でも国家試験でも発行されるものは同じ「保育士証」です。

橋本 橋本 圭介(はしもと けいすけ)

 学校法人三幸学園
 大宮こども専門学校専任講師
 小田原短期大学非常勤講師

保育士国家試験が誕生した背景

保育士国家試験が開始された歴史を振り返る前に、保育士自体の歴史を振り返ってみます。
昭和22年に制定された「児童福祉法」に基づき昭和23年保育士の前身となる「保母資格」が誕生しました。
その後、昭和60年に「男女雇用機会均等法」が制定され、男性も保育に関わる人が増加し、保育士資格試験を受験する方も少しずつ増えてきました。
しかし、まだ保育士の名称で呼ばれることはなく、女性の保育士は「保母さん」男性の保育士は「保父さん」と呼ばれ、保父さんは公的には「保母資格」とされていました。

平成11年に行われた「男女雇用均等法の大幅な改正」に伴って「保育士」という名称が登場しました。

平成15年に児童福祉法が改正されて、保育士資格は公式な国家資格になりました。
このことで保育士として活動するには、保育士養成施設(養成校)に通う、もしくは保育士国家試験に合格することで保育士資格証明書を取得することができるようになりました。併せて都道府県知事に対し登録手続を行うことで「保育士証」の交付を受けられるシステムになりました。

ここ数年の試験の傾向

国家試験の受験者数の推移

引用:https://www.career-station.co.jp/contents/examination/conditions/

平成16年の受験者数35,237人の当初から約15年後の平成30年では受験者は約2倍に増えています。
それだけ保育士が不足していると同時に養成校に通学するよりも早く資格取得を目指す人が増えていることを証明しています。

実際の合格率は?

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保育士国家試験は2部構成になっています。一次試験は筆記試験9科目。
まずはこの9科目全部に合格することが求められます。
一次試験に合格すると二次試験(実技試験)の受験資格が与えられます。
二次試験は、ピアノ等で弾き歌い、絵画、読み聞かせの3つから2つを出願時に選びます。

実際の合格率(二次試験合格者率)ですが、決して高い数字ではありません。

平成30年(年2回)の結果として:

受験者:68,388 人 合格者:13,500 合格率19.7% という結果です。

過去の結果も大方20%前後で推移しています。

なぜ、合格率が20%なのか?

筆記試験の合格点は各科目60%の正解です。
20問科目であれば、12問正解、10問科目であれば、6問正解で合格、しかも4択または5択と論述試験がありません。
他の国家試験に類を見ない基準です。にもかかわらず、合格率が低いのはなぜでしょうか。考えらえる可能性は2つあります。

可能性1:受験資格が広い。保育系の学校を卒業しなくても受験できる。

司法試験は予備試験に合格した者、そして法科大学院を卒業が受験資格と専門性を十分に学んできた人が対象です。
したがって、ちょっと受けてみようかなという人が多いと考えられます。

可能性2:合格点が60点、しかもマークシート

子育ての経験があったり、近接領域の学習をしてきた人が、準備も満足にしないで運が良ければ受かるかもしれないという感覚です。
受けてみたら意外と難しかったという声をよく聞きます。

養成校VS国家試験

保育士資格を取得への道

  • 指定保育士養成校を卒業する
     ・通学生の学校(大学・短大・専門学校)
    ・通信制の学校(主に短大)
  • 保育士国家試験を受験して合格する。
  • 幼稚園教諭の免許があると数科目などが免除される。

養成校(専門学校、短期大学、大学など)を卒業すると同時に資格が与えられます。
保育所実習、児童福祉施設実習と在学中に数回、現場での連日実習がありますが、事前に養成校での指導もあります。

国家試験での資格取得は、特に実習義務はありません。
よくどちらが大変ですか?取りやすいですか?と聞かれます。
どちらも大変ですと答えています。国家資格ですから、お手軽に取得できるものではありません。

学習のコツ

市販されている保育士試験対策の参考書や問題集は、「これだけで合格!」などと売れそうなキャッチフレーズを書いていますが、これだけで合格できたら、合格率が20%弱ということはありません。
合格点は各科目60点ですが、国家試験ですからそれなりの難易度はあります。
科目数も9つとボリュームもあります。
市販の教材と過去問題だけで合格できる人もいますが、それは、学習の仕方が分かっている、過去の他の国家試験を受験して合格した経験がある等だと考えます。

私が考える学習のコツ

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  • 2回の試験で合格に達すること(1年に2回試験があります)
  • 楽しみながら学習すること
  • 一人で学習しないこと

です。この試験合格への準備はかなり時間もかかりますし、エネルギーも必要です。
受験準備中はいつもこのことが頭にこびりついて、合格するまで解放されません。

したがって、1年で合格しないと心も体ももたなくなり結局途中で放棄してしまいます。
2回で一次試験合格!万が一の3回目!ぐらいの勢いが必要です。
長年指導してきて4回目で合格に到達した人はあまり見たことがありません。

「学習が楽しいわけないでしょ!」と言われますが、つまらなくしているのは言っている本人です。
楽しくなるために何をするか!を考えることです。ここでの楽しさは「正解すること」です。
どんなに内容を理解しても、正解しないと何にもなりません。
それには一人で学習しないことです。一人で学習するリスクは2つあります。
一つは「明日やろう」明日のなると「また明日からがんばろう!」とずるずる先延ばしになっていきます。
もう一つのリスクは一人で学習していると間違った情報を覚えてしまって試験で不正解になります。

今後の展望

1年に2回、約70,000人が受験する保育士国家試験、合格率が低いの気になりますが、合格率を上げることが目的ではありません。
保育の現場で働く人たちにためになるような国家試験の出題内容を再考する時期に来ています。
保育士不足を解消する一つの手立てであることに加えて、保育士の質の確保が求められます。
幼保無償化で保育の質の低下が危惧されています。
そんな懸念を払拭するための知識としての試験であると同時に、現場でも活用できる問題構成も必要です。

ポイント

  • 国家資格としての質を担保しつつ、合格者を増やしていく
  • 保育士国家試験の受験要件は他の国家試験に比較して幅広く、それだけ多様性のある人材を求めている。
  • 合格率向上へ全国保育士養成協議会も本腰入れて質の向上に努める。

みなさんは園児にとって先生であって、養成校組なのか国家試験組化の区別はつけられません。
保育所はこどもの命を預かり、育む場所です。
目の前にいる保育士が国家試験合格組なのか養成校卒業組なのかは、園児や保護者には関係のなく、どちらも「子どもの最善の利益」のために同じ志を持つ専門職なのです。

参考文献

保育士資格試験の歴史について
https://www.tanomana.com/smp/freepage_detail.php?cid=0&fid=204

保育士試験受験者数
https://www.career-station.co.jp/contents/examination/conditions/

記事公開日:2019.12.16

記事更新日:2019.11.29