2021.09.12
厚生年金とは?女性が知っておきたい年金制度についてわかりやすく解説!
厚生年金について知っていますか?
「年金制度は複雑なイメージでよくわからない」という女性も多いのではないでしょうか。
今回は、厚生年金と国民年金の違いや、アルバイトやパートの場合、扶養に入っている場合など、さまざまなパターン別に年金制度についてわかりやすく解説していきます。
厚生年金ってなに? 年金の種類と違い
そもそも年金ってどういう仕組みなの?
まず最初に、日本の年金制度について簡単にご紹介します。
「年金」と一口に言っても、実はその基本構造は以下の通り、3階建てとなっています。
大きく2つにわけることができ、1階・2階は、国が管理・運営する年金「公的年金」、3階は企業や個人が独自に加入する年金「私的年金」です。
今回取り上げている「厚生年金保険」は、公的年金であり、日本の年金構造の2階部分に相当する保険のことです。
厚生年金とは
厚生年金は、老後働けなくなった際に給付を受けられる社会保障制度の1つです。
国民年金に上乗せされる年金制度のため、給付を受ける際には、国民年金に厚生年金が加算された合計の金額分を受け取ることができます。
受け取れる厚生年金の金額は、納付期間や納付してきた金額によって異なります。
厚生年金は、主に会社員や公務員が対象です。
扶養に入っている専業主婦の方や自営業の方などは、厚生年金の対象とはなりません。
自営業者は第1号被保険者、会社員・公務員は第2号被保険者、第2号被保険者の配偶者は第3号被保険者というように、職種によって厚生年金被保険者が分類されているのが特徴です。
厚生年金の納付額は、各働き手の標準報酬月額(毎年4月~6月の給与をベースとして計算した月額給与)とボーナスなどに共通の保険料率を掛けて算出します。
その半分は雇用主(企業や行政)が、もう半分は加入者(働き手)が負担します。
なお加入者側の負担保険料は、毎月の給与から天引きされ、雇用者側が一括して納付していることがほとんどです。
※詳しくは本記事の「保険料は給与によって変わる」でご紹介します。
国民年金との違い?
国民年金は基礎年金とも言われているように、20歳以上60歳未満の国民の全員に加入義務があります。
一方、会社員や公務員が加入している厚生年金は、国民年金に上乗せされる年金制度です。
さらに、国民年金の納付額は一定金額なのに対して、厚生年金は収入によって納付額が変動し、その分老後に受け取ることのできる給付額も変わります。
厚生年金の加入条件
厚生年金は、仕事内容や働き方によって、加入条件や受けられる給付が異なります。
将来のためにも、自分がどのようなパターンにあたるのかをしっかりと理解しておくことが大切です。
厚生年金に加入するには具体的にどのような条件があるのか、調べてみました。
4つの加入パターン
厚生年金への加入は、次の4パターンにわけられます。
1. 当然被保険者である
厚生年金適用の会社に常時雇用されている70歳未満の方が当然被保険者です。国籍や性別関係なく被保険者となります。
2. 任意単独被保険者である
厚生年金適用以外の会社で雇用されている70歳未満の方が任意単独被保険者です。事業主の同意と厚生労働大臣からの認可を受けられた場合、単独で加入することができます。
3. 高齢任意加入被保険者である
70歳以上であり、厚生年金適用の会社に勤務していれば高齢任意加入被保険者になることができます。
4. 条件を満たす非正規雇用の場合である
非正規の雇用形態であっても、以下の2つの条件を満たしている場合、厚生年金保険の被保険者となります。
・1ヶ月に働く日数が一般社員の4分の3以上
・1週間に働く時間が一般社員の4分の3以上
上記の2つの条件両方に当てはまる場合は、収入に関わらず厚生年金に加入できます。
非正規雇用の場合は、労働日数と労働時間が決め手!
厚生年金の加入については、労働日数と労働時間をよく確認する必要があります。
労働日数が4分の3以下の場合でも、以下の5つの条件を満たしていれば、厚生年金の被保険者となる可能性があるためです。
1. 週の所定労働時間が20時間以上
2. 雇用期間の見込みが1年以上
3. 賃金の月額が8.8万円以上
4. 学生でない
5. 常時501人以上の会社に勤めている
契約社員や時短勤務の場合でも、上記の条件を満たしていれば正規や非正規の雇用形態に関係なく、厚生年金に加入することが義務づけられています。
たとえば、1週間の所定労働時間が40時間なら、30時間以上働いていれば、アルバイトやパートなどの非正規雇用であっても、厚生年金へ加入する必要があるのです。
厚生年金の保険料
会社に勤めて給与の支給を受けていると、毎月給与から天引きされている費用があります。保険料がありますよね。
給与の手取り金額が減ってしまうことから、マイナスなイメージを持っている人もいるかもしれません。
天引きされている費用は主に6つあり、4つの年金・保険料(厚生年金・雇用保険・健康保険・介護保険)と、2つの税金(住民税・所得税)です。
その金額は必ずしも他の人と同じではなく、各個人によって異なります。
では、厚生年金の保険料はどのように算出されているのでしょうか。
具体的に解説していきます。
保険料は給与によって変わる
厚生年金の保険料は、給与と賞与に保険料率(18.3%)を掛けて算出しています。
そのため、保険料は一律ではなく、それぞれの収入によって異なるのです。
会社から支給される1ヶ月分の給与は「報酬月額」と呼ばれ、毎年4月、5月、6月の報酬月額をもとに計算された指標を「標準報酬月額」と呼びます。
厚生年金保険料は、この「標準報酬月額」と賞与に保険料率を掛けて計算されます。
給与に大きな変動がない限り、原則9月から翌年8月まで天引きされる厚生年金保険料は変わらないため、たとえ少し給与の少ない月があったとしても天引きされる額は変わらない仕組みとなっているのです。
それであれば「この3ヶ月間の報酬月額が低いほうが良いのでは」と考える人もいるかもしれませんが、標準報酬月額をもとに算出される社会保険として、傷病手当金や出産手当金もあります。
標準報酬月額が低いと、これらが十分に給付されず損をしてしまう可能性もあるのです。
会社勤めの場合は、保険料負担は半額
厚生年金の保険料率は、国民年金を含めて18.3%です。
給料の約2割?と驚く人もいるかもしれませんが、会社員の場合は会社が半分負担してくれます。
そのため、実際に加入者が負担するのは半額分の9.15%です。
例えば、標準報酬月額が23万円の人の厚生年金保険料の全額は、23万円×18.3%で4万2,900円となり、これを会社と社員が折半すると、働き手側の実質の負担額は2万1,450円となります。
厚生年金の扶養に入っていれば0円
厚生年金では「控除」が受けられます。
「控除」とは、「ある金額から一定の金額を差し引く」ことです。
厚生年金に加入している会社員であれば、扶養している配偶者の国民年金保険料は0円となります。
国民年金は、会社員や配偶者であっても、ひとりひとりに加入義務があり、控除もありません。
一方、厚生年金は、扶養に入っている、かつ以下の3つの条件を満たしている場合、控除を受けることができます。
1. 年間収入130万円未満である
2. 60歳以上、または障害厚生年金受給者が年間収入180万円未満である
3. 同居している場合、扶養者の収入の半分未満である
条件となる収入は、過去の収入ではなく、被扶養者と認定された日以降の見込み収入額となるため、注意しましょう。
厚生年金について知っておきたいこと
ここからは、とくに女性が知っておきたい厚生年金の制度について解説していきます。
結婚や出産、産休育休中、もしもの離婚の際に損しないためにも、あらかじめ厚生年金について知っておきましょう。
産休育休中の厚生年金
厚生年金の納付は、産休中・育休中ともに免除されます。
免除となる期間は、休業する「開始月」から「終了前月」までです。
例えば、こどもが1歳になるころまで育休・産休を取得するなら、約1年3ヶ月の間の厚生年金負担が免除されるということです。
対象期間に納付免除となっていても、厚生年金の受取金額は減額されません。
また、免除期間中であっても、被保険者資格に変更はありません。
注意したいのは、育休産休期間に入ったからといって、自動的に免除となるわけではないという点です。
厚生年金負担免除に必要な手続きは、申請書の提出です。
申請書の提出手続きは、会社を通しておこなわれ、提出後は被保険者と同様に会社側も保険料が免除となります。
なお、産休・育休中は、通常給与から天引きされている「健康保険料」も、厚生年金同様に納付免除となります。
結婚や離婚による扶養手続き
結婚をして名前が変わった場合、「被保険者氏名変更届」にて氏名が変わったことを届ける必要があります。
結婚後も仕事を続ける場合は、会社側に年金手帳と「被保険者氏名変更(訂正)届」を提出し手続きをおこないます。
さらに、結婚後に扶養に入る場合は、配偶者の勤め先で手続きをおこなう形となります。
その際の手続きには、「国民年金第3号被保険者該当届」と夫と妻双方の年金手帳が必要です。
一方、離婚をした場合は、年金分割制度を利用して年金を分割することができます。
年金分割制度は、離婚後の2人の生活水準に大きな差が生まれないよう導入された制度です。
婚姻期間中に納付した厚生年金保険料は、夫婦の共有財産として考え、分割することができます。
年金分割の手続きには、「年金分割のための情報提供通知書」が必要です。
離婚前の請求も可能で、夫婦共同でも、どちらか一方でも手続きを完了させることができます。
厚生年金の受け取り方法
老後に厚生年金を受け取る際は、受け取る人が自ら手続きをする必要があります。
受給できる年齢になれば自動的に振り込まれるというわけではないので注意しましょう。
厚生年金の受給は、65歳からとなっていますが、60歳を過ぎていれば繰り上げて受け取ることが可能です。
繰り上げ申請については、年齢や性別によって条件が異なるため、年金事務所で確認することをおすすめします。
また、受給を70歳以降に繰り下げることも可能です。
70歳以降に繰り下げた場合は、受け取ることのできる年金額が月0.7%積み増しになり、お得なことから、最近は繰り下げて受給する人も増えているようです。
今後もさらに高齢化社会が進み、働き続ける高齢者が増えることが予想されていることから、それにともなって受給開始年齢も繰り下げる人が増えると考えられています。
最後に
いかがでしたでしょうか。
厚生年金の制度内容について、国民年金との違いや知っておきたい制度内容について幅広く解説してきました。
厚生年金は、保険料の積み立て額が大きいほど受給額も大きくなります。
老後の生活のためにも、自身のライフスタイルからどれほどの積み立てが可能なのか考えてみることや、元気に働ける現役時代に長期加入しておくのがおすすめです。
また、女性は特にライフイベントによって手続きが必要な場合もあるため、制度内容についてしっかりと理解しておきましょう!
記事公開日:2021.09.12
記事更新日:2021.09.09